ゾイドオリジナル (ZOIDS ORIGINAL)

ストーリー

後編『雪上の抗戦』登場機体・人物紹介へ

【1】
・・・5年前、ヤードは、共和国軍の中継基地に食料物資を搬送した帰り、急に森の中で深い霧に包まれ、レーダーも効かなくなり、自分の居る位置まで見失ってしまった。
その白い闇の中でかすかに光るものを見つけた。近づいてみると、そこにいたのは、身を屈めた2機の見たことも無いゾイドだった。
すでに武装をほどこされていた戦闘ゾイドであったが、機体マークは無い。
不用意に近づいたことに少し後悔したが、なぜか攻撃を受ける気はしなかった。
間もなく、二機はこちらに向け、まるでお辞儀をするように、頭をゆっくりと下げてコックピットを開いた。
その中には子供・・・それぞれの機体に女の子と男の子が眠っていた、それがティスとカイであり、フォクシーとルクシーとの出会いである。

軍人なら部隊に報告するのが当然ではあるが、ヤードは、この出来事を報告する気にはならなかった。
報告したら、この子たちを戦火の中に巻き込むような予感がしたのだ。
それは長年、戦争というものを見てきたヤードの直感であった。
ヤードは、この時に決心した。この子たちは神からの授かりものだと思って、我が子として育てようと・・・。

【2】
あれから二週間ほどすぎた深夜、寝入っていたティスが飛び起きた。
「兄さん、また敵が来るわ! しかも今度は前より多いみたい!」
「分かった、ティス!」
カイは警報装置のボタンを押した。 小さな村の中に初めての警報音が鳴り響く。
「どうした?」
あわててヤードが飛び込んでくる。
「おじさん、帝国軍が来る・・・。村のみんなを避難させて!」
カイは真剣な瞳でヤードを見つめた。
「・・・うむ、分かった!」
大声で答えると、ヤードは部屋を飛び出していった。

突如、静まり返った森の方から何かの咆哮が聞こえ、同時に窓の外から青白い閃光が入り込み、さらに大きな爆発音が轟く。
サーベルタイガー部隊を指揮下に加えたバイアン部隊の侵攻だった。
「前回は不覚をとったが、今度はそうはいくものか、借りは返させてもらう。サーベル隊、攻撃を仕掛け、子狐どもをあぶりだせ!」
バイアンが昂ぶった声で命令した。
迫りくる砲撃の嵐の中を二人はフォクシーたちに乗り込み、迎撃態勢にはいった。
「おじさんたち、無事に避難できたかなぁ」
「きっと大丈夫、ゾイドマンモスが村の方向に走っていくのは確認したよ」
「ここから先は私たちの村よ、これから先へは通さない!」
二人はすばやく回避行動をとりながら、前に進み出た。

絶体絶命の状況下で不安な彼らだったが、コマンドウルフが横から疾風のように現れて、サーベルタイガーの首筋に噛みついた。
サーベルタイガーの首筋から火花が散る。
「あ、あれは共和国軍のトラップ遊撃隊・・・!?」

【3】
「戦火を確認したので馳せ参じた。理由は分からぬが、同じ帝国軍を敵に持つ者よ。助太刀いたす!」
隊長のザッパが搭乗するコマンドウルフを先頭にしたトラップ遊撃隊であった。
「ちっ、邪魔が入ったか! 構わん、まとめて撃破しろ!」
バイアンの号令とともに、サーベルタイガーの背部に装備された
2連装ビーム砲が火を噴く。
このビームにトラップ遊撃隊の1機が撃破された。
通常ならビームの当たらない距離と速度で動いていたにもかかわらず、5、6発被弾している。
「敵機はディメトロドンの射撃管制の援護を受けている。気をつけろ!」
ザッパは叫んだ。
サーベルタイガー部隊を加えたバイアンの部隊の火力は凄まじく、両軍の力は拮抗していた。

一進一退の攻防が続くその時に、ヤードから通信が入る。
「村の人たちは無事に避難させた。ティス、カイ大丈夫か?」
村の方向からゾイドマンモスが突進してくるのを確認して、ティスがヤードを叱りつけるかのように叫ぶ。
「おじさん、なんで戻ってきたの!?」
「大事なうちの子を放っておけるか、二人とも左右によけて、真ん中を開けるんだ」
フォクシーたちは、すばやく左右に跳んだ。
その瞬間、2機の真ん中をビームの閃光が走り、前方にいたサーベルタイガーに直撃した。
ヤードは、兄妹とフォクシーたちを身を挺して援護した。

【4】
しかし、その数秒後には、後方で爆発音がした。ディメトロドンの最新兵器である新型の誘導ミサイルが、ゾイドマンモスに上部から着弾した爆発音だった。
「直進してくる鈍重なマンモスに当てるのは簡単だねぇ」
バイアンは悦に入った笑みを浮かべてつぶやいた。
ゾイドマンモスは撃破されたが、辛うじてヤードは脱出に成功した。
「・・・よくも、おじさんを!」
ティスはディメトロドンを鋭い目で睨みつけて、ウイングブレードを広げた。
美しい音を奏でながら、ウイングブレードが光りだす。
超高周波振動の音がティスの耳に響く。
一気に加速して、バイアンに迫って行った。
「あとはあの子狐どもだ! サーベル部隊、トラップ遊撃隊は任せたぞ!」

【5】
バイアンは怒りの感情を押さえて冷静に狙い、遮二無二に突っこんでくるティスのフォクシーに、リニアレーザーガンを正確に浴びせた。
次々と被弾し、蓄積していくダメージによってティスのフォクシーはバランスを崩し、倒れてしまう。
「だ、だめだ、ティス! 冷静になれ!」
「ぐ、兄さん・・・。」
ディメトロドンが近づき、動きの止まったフォクシーにビームガンの砲身が向けられる。
「ほう、近くて見ると美しい機体だねぇ、私のコレクションにふさわしい。どこに穴をあけたらもっと綺麗になるかな?」

助けに向かうカイの行く手を、1機のサーベルタイガーがさえぎった。
黒い肩のエースパイロット機だ。
正面からビームを連射してくる。カイのルクシーは、それを低い姿勢で滑り込むように回避すると同時に一気にジャンプした。
フィーィーンと、軽い連続音と共にレーザーバルカンが回転し、上空から光の矢が降り注ぎ、サーベルタイガーのボディを貫いた。
高いジャンプ力と空中においても姿勢制御ができる、ミラージュフォックスの軽業であった。
その勢いでカイとルクシーはディメトロドンに迫る。
カイは狙いを定めトリガーを引くが、まだ距離が遠く、有効射程の短い小口径レーザーバルカンは、重装甲のディメトロドンに対してさほどのダメージを与えられなかった。
「こざかしい狐め! 先にお前から始末してやる!」
ディメトロドンのミサイルが、ルクシーに向かって発射される。
間一髪よけたルクシーだったが、爆風で真横に吹き飛ばされてしまう。

・・・しかし、この攻撃でディメトロドンのレーザーガンの射線が完全にティスのフォクシーから外れた。
「今だ、ティス! いけー!」

ディメトロドンに迫るティスのフォクシー。その瞬間、ウィングブレードがまばゆい光を放ち、美しい音を奏でた。

フォクシーは最後の力を振り絞り、出力を最大にしたウィングブレードで重装甲のディメトロドンを一刀両断し、ついに撃破した。

【6】
「二人の勇敢な戦士よ、感謝いたす!」
トラップ遊撃隊の隊長ザッパは深々と頭を下げると、隊を率いて去って行った。

兄妹はフォクシーたちから降りて、急いでヤードの元へ駆けつけた。
「・・・もう、大丈夫じゃよ。この年で無茶をしてしまったようじゃ。
しかし、二人とももう立派な大人じゃな。」
「無事でよかった・・・おじさん」
二人は安心するとヤードに抱きつき、さっきまでの勇ましい表情は消え、子供のように泣き出した。

それから数日後、村の人たちがティスとカイの勇敢な戦いを祝して、お祭りを開いてくれた。

皆が寝静まった頃、ティスとカイはこっそり起きて、食卓のテーブルにそれぞれ手紙を置いた。
記念にアルバムから数枚の写真を抜いた。
家のドアを閉めて、二人はあらかじめまとめておいた荷物を載せて、フォクシーたちに乗り込んだ。
「消音システムのスイッチは入れた?」
「・・・うん、兄さん」
「じゃあ、立ち上がって。通信が傍受されたらまずいから、指定のポイントまで通信を切るね。目視でついてきて」
「分かった・・・」
小さい音でティスのすすり泣く声が聞こえた。
「泣くなよ、僕たちがここにいたら、村のみんなが戦火に巻き込まれる。僕たちはここにいてはいけない存在なんだ。分かっているよね?」
「うん・・・」
ティスが消え入りそうな声で返事をしたのを確認すると、カイは通信を切った。
カイの目にも涙が浮かんでいた。

次の朝が来る前に、二つの白い機体が三日月のわずかな明かりに照らされて、森の中に消えて行った。

夢うつつながら、ふと何かを感じ、目が覚めたヤードは言った。
「・・・さようなら、ティス、カイ・・・」

時が流れ、ヤードは安らかに眠りについた。
最期に彼が残した手記には、“ティスとカイの駆る二体のミラージュフォックスは、まるで空を舞う天使のようであった”と記してあった。

のちに、フォクシーたちの機体をベースに、共和国軍はシャドーフォックスを量産していったと伝えられている。

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